第1回「ファイナンス概論」
ファイナンスとは何か。ファイナンスは私たちの暮らしと密接な関係を持っている。本講義ではファイナンスと経済・社会との関係を概観し、ファイナンスを学ぶ意義について確認する。
第2回「時間の価値と割引現在価値」
今日の1万円と1年後の1万円は同じ価値を持たない。それは時間の価値が反映されるべきだからである。時間の価値を表象したものが金利である。金利を用いてわれわれは現在の価値を将来の価値へと変換可能となる。逆に金利を使って将来の価値を現在の価値へと変換することもできる。本講義ではファイナンスにおける重要な概念である時間の価値と割引現在価値の関係について学ぶ。
第3回「株式と債券の価値」
資本市場で取引される主要な資産の代表が、株式、債券である。本講義では株式と債券の特徴について学ぶ。さらに第2回で学習した時間の価値と割引現在価値の関係を用いて株式や債券の価値について学ぶ。
第4回「リスクとリターン」
将来、どのような出来事が起こるかは不確実である。その結果、経済的な不利益が生じることもあり、これをリスクという。本講義では一般的なリスクを定義すると同時に、ファイナンスで扱うリスクの特徴について説明する。また、リスクとその報酬たるリターンの関係と計測方法について学び、無差別曲線によるリスク資産の選択を考察する。
第5回「ポートフォリオのリターンとリスク」
複数の資産からなる資産全体をポートフォリオと呼ぶ。ポートフォリオへ分散投資することにより、ポートフォリオ全体のリスクを減少させることができることが知られている。本講義ではこのポートフォリオのリターンとリスクの持つ性質について学び、最適なポートフォリオ選択とは何かを考える。
第6回「CAPM−資本資産評価モデル−」
市場が正しく機能しているとき、資産のリターンはそのリスクに応じて決定される。資本資産評価モデル(Capital Asset Pricing Model:CAPM)は、市場の均衡状態において資産のリスクとリターンの関係を明らかにしたモデルである。本講義ではリスク指標であるベータをはじめとしたCAPMの含意について学ぶ。
第7回「デリバティブ−派生証券−(1)」
デリバティブとは派生証券とも呼ばれ、その価格が株式や債券など、別の資産の価格に依存して変動する性質を持つ資産のことを総称したものである。デリバティブには仕組みや計算が難しい、リスクが大きく投機性があるなどのイメージがあるが、その本質は意外に簡単で便利な道具でもある。本講義では先物取引、オプション取引など基本的なデリバティブの種類と性質について学ぶ。
第8回「デリバティブ−派生証券−(2)」
デリバティブは本来、投機ではなくリスクヘッジの道具である。本講義では先物やオプションを用いたヘッジの仕組みや投資手法、さらにデリバティブの評価方法について学ぶ。
第9回「資金調達」
企業は事業活動を行うために資金を調達しなくてはならない。この資金調達源が企業内部にあるか外部にあるかで、内部金融と外部金融に分けられ、さらに外部金融は直接金融と間接金融に分類される。また、内部金融等その他の金融手段についても解説する。
第10回「財務諸表と財務業績の測定」
資金の調達と運用の結果である財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)について学ぶ。さらに、財務諸表の分析手法についても学習する。
第11回「資本コスト」
資本コストとは、企業側から見れば、資金(資本)を調達するためのコストであると解釈される。また、出資者側から見れば、差し出す資金に対する見返りであるとも考えられる。第2回で紹介した割引計算の割引率にも資本コストが利用される。資本コストの概念はファイナンス理論において最重要であると同時にわかりづらい側面もある。本講義では、この資本コストについて明らかにする。
第12回「資金運用」
企業では調達した資金を効率よく運用(経営)することが求められる。そのための投資意思決定の理論について学ぶ。
第13回「企業価値評価」
企業価値とは、将来の企業の経営活動の成果を映し出すものに他ならない。これまでの議論をもとに企業価値評価の技法について学習する。
第14回「情報非対称」
市場における参加者が持つ情報に差がある、つまり当事者間に情報格差があるとき、情報の非対称性が存在するという。情報の非対称性によって、情報優位者は情報不利者の犠牲のもと、自身にとって有利な取引結果を引き出すことができる。本講義では、その問題点を指摘し、解決策を考察する。
第15回「ファイナンスと今日的課題」
市場とは本来、市場参加者の自由に委ねられるべきものである。しかし、需要と供給に基づいた単純なルールでは、不都合を生じるのも事実である。現代の市場がどのような変容を繰り返し、どのように規制も変化してきたのか学ぶ。また、企業価値推計における資本コスト算出、資本コストと企業価値最大化を例にとって、ファイナンス理論との付き合い方、ファイナンス理論の考え方を現実にどのように活用すべきかについて述べる。
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