知覚・認知心理学


第1回「知覚・認知心理学とは−考えることの科学−」

知覚・認知心理学とは、広義の「考えること」の科学である。広義とは、意識的のみならず、無意識的に「考えること」を含むからである。 初回では、人がどのような場面で、どのように「考える」のか、に焦点を当て、それが、知覚・認知心理学ではどのように扱われるのかを紹介する。

第2回「知覚・認知心理学の研究法−「考えること」をいかに科学するか−」

知覚・認知心理学は、実証的な科学である。実証という意味は、データを基に、自ら立てた仮説を検証していくことである。今回は、「考えること」を科学する実証的な方法として、行動実験的方法、脳神経生理学的方法、神経心理学的方法等を説明する。

第3回「知覚・認知の神経的基盤−脳が考える−」

意識的にせよ、無意識的にせよ、「考えること」の担い手は脳を含む神経系である。 今回は、脳神経科学の観点から、特に、中枢神経系の構造と機能との関係を中心に、「考えること」の基盤を説明する。

第4回「感覚の科学−感じるしくみ−」

人はどのように周囲の環境から情報を取り入れるのだろうか。また、人にとっての情報とはどのようなものなのだろうか。 今回は、視聴覚を中心に、眼球や耳といった感覚器の構造とこれらを通して情報を取り込むしくみについて概説する。

第5回「知覚のしくみT−モノが見える不思議−」

眼球で捉えた揺らめく光の地図から、人はどのように色や形態、運動、奥行きといった意味のある特徴を抽出しているのだろうか。またこれらをもとに、どのようにモノの形や位置を知るのだろうか。 今回は視覚の物体認知を中心に、知覚のしくみについて概説する。

第6回「知覚のしくみU−意識にのぼる世界とは−」

われわれの知覚世界は、単独の感覚からの入力に基づいているのではない。今回は、知識や文脈、異なる感覚モダリティからの情報が知覚世界に与える影響を説明する。また、意識的な視覚体験と行為の乖離を感じさせる症例を紹介し、意識にのぼる知覚世界とは何なのかを考える。

第7回「注意と認知−限られた資源を生かす−」

人の情報処理能力には限りがある。そのため、当面必要な情報を選択して、重点的に処理するしくみがわれわれには備わっている。 今回は、その情報選択の役割を担う注意について、代表的な理論と実験パラダイム、障害をとりあげて説明する。

第8回「記憶のしくみT−記憶と神経的基盤−」

記憶は脳でどのように形成・表現されているのだろうか。前半は、記憶のプロセスや特徴、分類について概観する。後半は、臨床研究を中心に解き明かされてきた脳と記憶の関係について、脳のマクロ(構造)とミクロ(神経)の双方の視点から概説する。

第9回「記憶のしくみU−日常記憶−」

日常場面を中心に、記憶の忘却と変容に焦点を当てる。前半は、人間がどのように情報を符号化し、そして貯蔵された情報の中から、何がどのように検索されるのかを概説する。後半は、記憶が変容するメカニズムについて、知覚・認知研究を通して考察する。

第10回「問題解決−山頂を目指すには−」

われわれは、常に、様々な「問題」に直面し、それを考え、「解決」している。今回は、知覚・認知心理学で扱う「問題」の分類、問題解決のプロセス、洞察問題や類推に焦点を当て、さらに、問題解決と脳活動との関連を説明する。

第11回「判断と意思決定−人間は合理的か−」

人間は、合理的に判断し、決定を下しているのであろうか。合理的というのは、判断が正しく、その決定は最大の利得をもたらすものである。今回は、まず、合理的な判断・意思決定としての期待効用理論を説明し、それと対比して、人間の意思決定の特徴とそれを説明する理論を紹介する。

第12回「推論−論理的に考える、一から十を知る一」

問題解決や判断・意思決定の背後には、「推論」が関与している。今回は、代表的な推論様式である「演繹的推論」と「帰納的推論」について説明する。演繹的推論とは、論理的な推論であり、帰納的推論とは、事実を基にして一般化する推論である。

第13回「クリティカルに考えるー信じる心、見抜く心−」

われわれが共有している事実はほんの一部にすぎない。互いが誤解なく理解し合うには、様々な場で正しく「推論」することが求められる。すなわち、情報を鵜呑みにせず合理的に推論すること(=クリティカルシンキング)が重要になる。クリティカルシンキングについて、事例を交えながら解説する。また、その育成に知覚・認知心理学の知見がどのように活かせるかを考える。

第14回「認知と発達−推論する心、共感する心−」

人間は、人と人との「間」で育ち合い、生物学的「ヒト」から社会に生きる「人」へと発達する。そこには、様々な認知機能の発達が関わってくる。前半、「知覚の熟達化」について解説する。後半、考えるシステムのなかでも「他者の心を推論する」機能がどのように発達するのか、実証研究を通して考察する。

第15回「認知と感情−悲しいから泣くのか−」

感情は、「考えること」と密接に関係している。今回は、人の認知機能・認知行動に、感情(情動)がいかに関わるのかを以下の3点に絞って説明する。@感情の基本的特性と理論、A感情が認知(記憶や判断・意思決定など)に及ぼす影響、B認知が感情に及ぼす影響。





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